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「相続税の目的」「租税負担の公平」
(平成29年5月23日裁決)のポイント
1)本件不動産を財産評価基本通達により評価すると
2)富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという「相続税の目的」に反する
3)「租税負担の公平」を著しく害する
だから
4)本件不動産については、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当である。
■「租税負担の公平」についての記述
「相続税負担の軽減策を採らなかったほかの納税者、被相続人が多額の財産を保有していないために同様の軽減策によって相続税負担の期限という効果を享受する余地のないほかの納税者」との間での租税負担の公平を著しく害し
「評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり」
■ 支部名 札幌 裁決番号平280015 裁決年月日平290523
裁決結果 棄却 争点番号400801990
争点 8財産の評価/1評価の原則/4その他
事例集登載頁 裁決事例集№107
▼裁決要旨
請求人らは、相続財産のうち一部の不動産(本件各不動産)については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法によらないことが相当と認められる特別の事情がないから、評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》を適用することはできず、評価通達に定める評価方法により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、被相続人による本件各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、被相続人が、多額の借入金により不動産を取得することで相続税の負担を免れることを認識した上で、当該負担の軽減を主たる目的として本件各不動産を取得したものと推認されるところ、結果としても、本件各不動産の取得に係る借入金が、本件各不動産に係る評価通達に定める評価方法による評価額を著しく上回ることから、本件不動産以外の相続財産の価額からも控除されることとなり、請求人らが本来負担すべき相続税を免れるものである。
このような事態は、相続税負担の軽減策を採らなかったほかの納税者はもちろん、被相続人が多額の財産を保有していないために同様の軽減策によって相続税負担の軽減という効果を享受する余地のないほかの納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反するものであるから、本件各不動産について、評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められる。
したがって、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当である。(平29. 5.23 札裁(諸)平28-15)